たんぽぽ
「落ち着け。」
「………ひっ……いや。いや。」
俺は力ずくで少女Aの腕を押さえた。
やっぱり女。
力は全然ない。
「誰と間違えてんだよ。」
「…………。」
「俺は雄太だ。もう忘れたか?」
「…………。」
「てか、もともと覚えてなかったりして。」
「…………。」
「どうでもいいけど、襲うの止めてくんない?」
「…………。」
話していても止めようとしなかった少女Aの腕は、ふいにピタッと止まった。
そして、止まったかと思った瞬間、少女Aは俺の手をおもいっきり振り払って何も言わずに美術室から走って出ていった。

嵐が去ったようだな。

俺は少女Aが飛び出ていった扉をじっと見つめて動かなかった。
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