たんぽぽ

「………。」
「あれ。」

俺は思わず声を出した。
びっくりした。
朱詩が泣いていない。

変わらずに眉は悲しそうに垂れているし、目も怯えの光を放っている。
でも、朱詩は泣いていない。

俺はいつもよりびっくりして、色々問い掛けた。
「今日は泣いてないんだな。」
「………。」
「まだ話してくんないか。」
「………。」
黙り込む朱詩につられて、俺も黙り込む。
何を話せばいいのか、全く浮かんでこない。

浮かんでくるのは、あの時の高嶺のうざい顔だけ。

高嶺の言った言葉が、俺の頭の中でぐるぐる巡っている。

「俺達は損してるんだって。」
「……?」
「高嶺に今日言われたんだ。」

なんだ?
俺は朱詩に相談してるのか?


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