たんぽぽ
「お前の名前は、朱詩摂南っていうんだってな。」
「……!?」
「そんなにびっくりすんなよ。高嶺が勝手に言ってきたんだ。詮索はしてない。これ以上はお前な事、何にもわかんねーよ。」
そう。
何にもわからない。

知りたいって気持ちがある。
でも、反対に知りたくないって気持ちもある。
朱詩が俺に似過ぎてるから。
俺を見ているようで怖いから。

真実を見るのが怖いから。

俺が黙って俯いていると、聞き慣れないモノが耳にはいってきた。



「………………この間はありがとう。」



え?



誰の……。



その瞬間、朱詩は美術室から出ていってしまった。

朱詩?
朱詩がしゃべった?


初めて聞いたその声は、泣き疲れたような寂しい声であり、深く心に染み渡る透き通った綺麗なものだった。




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