僕らの宇宙戦艦奮闘記
事件が起きたのは、クワガタ建造物が、日本に来て1年目の夏。
今から14年前になる。
その日、社会見学と称して、この戦艦を見学に来ていた『県立小室中学』の生徒たちがあやまって戦艦の中に入ってしまったのだ。
それは、この戦艦を外から眺めるしかなかったすべての研究機関にとって、まさに『ワオ!』と叫びだしてしまうような出来事だった。
それまで、このクワガタ型建造物は、地球のいかなる技術をもってしても、内部への侵入を拒んでいたのだ。
穴をあけようにもあけられず、扉らしきところに付いているスイッチを押しても何の反応も示さず、エネルギーを入れるような場所も見当たらず、赤外線、紫外線、放射能、それらすべての電磁波を跳ね返していた。
そんな、クワガタが、なぜに、日本の中学生が着た途端、受け入れたのだろうが?
そんな疑問を浮かべながら、小室中学生に続き、大人たちが中に入ろうとすると、途端にクワガタ型の扉が閉まった。
‥…大人を完全に拒絶する戦艦。
研究者たちが、この戦艦には意思があるということを初めて認識した瞬間である。
研究者たちは、大いに喜んだが、関係者たちは大いにあせりを生んだ。
なにせ、すべての電磁波を遮断するのだ。
当然、携帯なんて通じない。
今まで中に入ったことがなかったのだから、通信の手段すら分からない
なおかつ、驚いたことに、この戦艦は小室中学生を中に取り込んだ途端、突然、起動を始めたのだ。
後に『小室中学事件』と呼ばれる、世界的に取り上げられた大々的なニュース。
今では、教科書でも見ることができる。
この時、生徒たちは木星まで飛び、誤って主砲を発射してしまったらしい。
その時の傷跡は、天体望遠鏡をのぞくと、地球からでものぞくことができるという。
その大きさ、直径35000キロほどの大きな円…ほぼ月の大きさである。
100メートルのエネルギー弾など、目ではなかったのだ。