僕らの宇宙戦艦奮闘記
第九章
 ここで戦艦ホムラにおける、運用方針について説明する。


 ホムラの運用には穏健派とタカ派が存在しており、現在はタカ派に比べ穏健派が圧倒的に多いというのが現状である。


 タカ派の主張はホムラの性能をもっと色々試してみながら、効率的に実用化すべきである・・・というものである


 実際にホムラは現在存在するどの科学力も優れた機能を持っており、他惑星に有人飛行を可能にする唯一の艦である。


 数億とかかる宇宙飛行も、ホムラにかかれば、ほぼ無料に近い金額でいけてしまうところも魅力的である。


 実用化されれば、それこそ人類の宇宙進出の夢は格段に進歩するだろう。


 月面基地、火星地球化計画(テラ・フォーミング)と言った、まさにSFの中でしか語れなかった夢物語が、現実となるのだ。


 だが、そこに一つの大きな壁が立ちはだかる。


 それがホムラは『子供にしか動かせない』という、あまりに大きな枷である。


 穏健派の意見は、もっぱらそこに集中する。


 子供にしか動かせない戦艦。


 穏健派の中には、戦艦ホムラを宇宙に放棄すべきである…という意見も絶えない。


 しかし、その意見は本当にごく一部である。


 オーバーテクノロジーの塊である戦艦ホムラを、そうやすやすと手放すのはもったいないのだ。


 ゆえに、ホムラは動き出してから15年間、子供の安全を最優先に考えながら、絶えず実験材料として、2年Sクラスによって運営されている。


 人道的立場から人体に危害が及ぶ可能性がある実験は行えず、本来なら軽々と太陽系圏内を脱出することも可能なホムラも、木星より外の世界には行ったことがない。


 (もっとも、木星に行ってしまったのも、不可抗力のため、それ以降は、火星より向こうに行くことはないし、その火星もいまだ着陸まではいたっていない。)

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