僕らの宇宙戦艦奮闘記
「そういうことや、斉藤。さっそく指示を…。」
そういえば、こういう仕事は、艦長である斉藤の仕事やろ?
何、サボってんねん?
「…美並さん、分かっていて、やっていらしたんじゃないですの?」
花子が、ここで初めて驚いた顔を見せた。
「何言うとんねん。花子。斉藤は?」
「‥…。」
佐倉が黙って指をさす。
彼女が指差した方向は、自分の足元。
足元?
言われて、視線を下に向けると…。
「!」
床に倒れている斉藤の姿を見ることができた。
艦内照明に照らされてはっきりと見ることが出来る斉藤の姿は、頭から血を出し、ぐったりとうなだれている。
意識もないようだ。
「斉藤!」
しゃがみ込み、近寄り必死に起こそうとして、頭の血が目に止まった。
頭から血を出している。頭を強く打っている。下手に動かしたら、まずい。
そこまでの思考がめぐり、斉藤に触れる手を躊躇した。
「衛生室、衛生室、応答願います!」
宇治原君が艦内放送で呼び掛ける、声が聞こえる
大丈夫、息はある。
意識がないだけで、呼吸が乱れている様子もない。
脳震盪だろう。強く打っているだけだ。
落ち着け、血を見るぐらいなら大丈夫。
衛生士は一番怪我のしにくい艦内の奥深くにいるはずだから、とりあえず全員無事と考えていいだろう。
大丈夫、すぐに助けは来る。
大丈夫、大丈夫。落ち着け、私。