僕らの宇宙戦艦奮闘記
「花子!」
「その名前で呼ばないで下さる?」
こんな状況でよく、言える。
まったく見上げた根性だ。
だからこそ…。
「…うちの右手つかんでてくれ…さっきから、怖くてしゃあないねん。」
その強さ…私にも分けてくれ。
「‥…。」
「‥‥‥‥‥」
艦橋内に、一瞬の静寂が訪れる。
でも、それは恐怖とか、切羽詰まった沈黙ではなく、誰もが当たり前だと思っていたからこその沈黙。
艦長席に座る…それは、とても怖いこと。
たった一人で40人近くの命を預かるのだ。それを怖くない人間なんてどこにもいない。
斉藤は強い。
たった一人で、ここに座れるのだから。
でも、自分はそこまで強くなれない。
足が震える。身体が震える。できることなら、今すぐこの場から逃げ去りたい。
でも、それはできない。
できないから…せめて、何かにつかませてくれ。
倒れないように…逃げ出さないように…。