僕らの宇宙戦艦奮闘記


「花子!」


「その名前で呼ばないで下さる?」


 こんな状況でよく、言える。


 まったく見上げた根性だ。


 だからこそ…。


「…うちの右手つかんでてくれ…さっきから、怖くてしゃあないねん。」


 その強さ…私にも分けてくれ。


「‥…。」


「‥‥‥‥‥」


 艦橋内に、一瞬の静寂が訪れる。


 でも、それは恐怖とか、切羽詰まった沈黙ではなく、誰もが当たり前だと思っていたからこその沈黙。


 艦長席に座る…それは、とても怖いこと。


 たった一人で40人近くの命を預かるのだ。それを怖くない人間なんてどこにもいない。


 斉藤は強い。


 たった一人で、ここに座れるのだから。


 でも、自分はそこまで強くなれない。


 足が震える。身体が震える。できることなら、今すぐこの場から逃げ去りたい。


 でも、それはできない。


 できないから…せめて、何かにつかませてくれ。


 倒れないように…逃げ出さないように…。
< 99 / 140 >

この作品をシェア

pagetop