指輪
「鈴ちゃん痛いよ~」

八尋がブーブー文句を言っている。


ここであたしが逆切れしたら

酷い女として記憶される気がする。


「お・・・・・・お礼何がいい?」

あたしは勇気を振り絞って八尋に聞いてみる。


返事が来るまでの時間が長くて右手の中指につけていた

ピンクゴールドのシンプルな指輪を親指で回しているとスルッと抜けて川に落ちた。


「あっ・・・最後の指輪が・・・・・・」

結構気に入ってたのにな・・・


「鈴ちゃん!!」

「ほぇ!?」

いきなり名前を呼ばれたからマヌケな返事をしてしまった。


「何その返事・・・笑

 まぁいいや。買い物に付き合ってよ!!」

「なんで??」

このときは本当に自分を馬鹿だと思った。

自分でお礼するとか言っておきながら『なんで??』だなんて。


「お礼してくれるんでしょ??

 ほら行くよ!!」

八尋は強引にあたしの手を取り

スケッチブックと絵を自分の鞄に入れて走り出した。

もちろんあたしの鞄も途中で拾ってくれた。
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