指輪
「なんで八尋が来るの!?」

あたしは今日退院するなんて誰にも言ってない。

友華は今日補習だって言ってた。

あたしが入院してる間に夏休みが始まっていたらしい。


「だって風さんに頼まれたし。」

八尋はそういってあたしの荷物を持った。


「あー鈴さん。
 先生用事があって来れないからちょっと待ってて〜」

パタパタと走っている担当のナース今井さんにそう言われ病室で八尋と待つことになった。


「鈴ちゃん元気になってよかったね〜」

八尋のお陰なんだけどね……

やっぱ好きな人がいるだけで頑張れる。

八尋は好きな人がいるけど毎日あたしのところに来てくれた。

優しいからね。

それに“原因”を聞いてくることは1回きりだった。


「ねぇ八尋。
 原因聞かないの??」

あたしは八尋には言わなくちゃいけないと思った。


「うん。
 聞かないよ。
 辛いことだったんでしょ??」

八尋はそう言いあたしの頭の上に手をおいた。


「話すって言ったら聞いてくれる??」

「もちろん。」

八尋は笑顔で答えてくれた。


「あたしの過去から話すから……」

原因は過去にある。

あれは6年前かな……
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