冷酷系女子
「つっ、月島さん!」
橘くんじゃない誰かに名前を呼ばれて、お互いぱっと手を放した。
あたしの名前を呼んだのは…確か、同じクラスの学級委員。
「あの、か上谷先生が捜してましたよっ」
「…あ、そう」
先生があたしに何の用だろう。
彼にどうもと告げて、行こうとするとまた名前を呼ばれ、呼び止められた。
「あっ、あの!好きです!!!」
「……は?」
「わー告白じゃん
やっぱ百合ちゃんモテんねー」
告白…?
なぜ?
あたしは彼の名前すら覚えてなくて、知ってるのは学級委員てことだけ。
それに話したことなんて、今日が初めてなくらいなのに。
なぜ、あたしが好きなの?
「あたしには、無理」
同じように人を簡単に好きだなんて言えないもの。
「そっ、そうですよね、僕なんかに言われても気持ち悪いですよね、本当にすみません」
きっぱりと断ると、彼はアッサリどこかへ行ってしまった。
「あーぁ、はっきり"無理"って
百合ちゃん冷たいなぁ」
彼のように全然関わったこともない人を好きと言えるのが暖かい人間なら、
あたしは橘くんの言う、冷たい人間でいい。
「冷たくて結構よ」
これから先、誰かに気に入られようとか、誰かを好きになる気もないのだから。