冷酷系女子



なんでいつも来るのよ



「颯…」



無意識に名前を呼ぶと

彼はいつもみたいに口を大きく横に広げて笑った。



「そうです、颯です。なんちゃって」



こんな時に変なこと言わないでよ、馬鹿。

颯は、笑顔のままくるっと向き直して冬木くんを見る。



「おにーさん、ストーカーは立派な犯罪なんすよ、知ってる?」

「橘…チャラ男がカッコつけんなよ」

「いやいやカッコつけてんじゃなくて、ほら俺って元々カッコいーからさぁ」



最早、訂正するのも面倒だわ。



「そんでぇー、今のぜーんぶボイスレコーダーに録音しといたよ、今のケータイって便利だねー
さらにさらにーツいてるね君、俺んちの親父ね警察官なんすよ、だから逮捕しちゃうぞー」



右手に持った携帯電話を左右に揺らしながら颯が言う。

冬木くんの顔色がみるみる変わっていく…



「そんな嘘…」

「嘘だと思うなら調べてみなよ」

「………っ」



冬木くんは一瞬ちらっとあたしを見ると、反対方向に物凄い勢いで走って行ってしまった。



「いやー、なんだろねあの変態キモッ」

「ねぇ、お父さんが警察って…」

「え?ウソウソ
親父はふつーのサラリーマン
ちなみに録音もしてないし」



う、嘘…?

相変わらずニコニコしてる颯

なによそれ…

汚いとかそんなの関係なく、あたしはなぜか地べたに座り込んだ。

安心…?した、というか

そうなのかも。

今はその表現が、一番合ってる気がする。



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