冷酷系女子



「じゃー俺が教えてあげよっか、一生に一度の恋ってヤツ」



颯はそう言ってあたしの手を引くとお店を飛び出した。



「え、ちょっと颯バイトなんじゃ…」

「思い立ったら即行動!つかいーんだどうせ、店長ウザイからやめたかったし」



颯がニコッと笑って再び歩き出そうとするのを、あたしは腕を引いて止めた。



「それは、無責任じゃないの
仕事をしてる以上、いくら上司に腹が立ったって無断欠勤は周りに迷惑がかかるし
第一人様に迷惑をかけてまで教わりたいものじゃない」

「…マジメだなー百合ちゃん」



颯は少し前屈みになってあたしと目線を合わせると、またニコッと笑顔をつくる。



「店長がウザイってのは口実だよ、だって俺今バイトより、百合ちゃんといたいから」



…よくもまぁ、

サラッとそんな言葉が出てくるものね。

感心するわ、あなたには。



「ねぇねぇ見てあそこのカップル」



ヒソヒソ話の女子高生たちが、あたしと颯を指さしてる。



「彼氏かっこよくない?」

「てか彼女も超きれーなんだけどっ」

「いいなぁ、お似合いー」



颯にも聞こえてたのか、彼は女子高生たちに向かって笑顔で手を振る。

彼女達の顔はみるみる赤くなって、早歩きでいなくなった。



「聞いた?今の
俺らカップルに見えるって」



颯はあたしの右手をとり、指を絡ませてぎゅっと握る。



「まずは恋への第一歩
今日はとりあえず楽しもうよ」


あたしは颯に言われるがまま、色々な所へ連れ回された。



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