冷酷系女子
確かに、慣れないことが何度も起こったせいか
あたしの心臓は颯の腕の中でいつもより少しだけ速く動いていた。
これが、ドキドキするって事
颯はあたしを離すと、いつもの笑顔で笑う
「それだよそれ、
恋って例えば、一緒にいるだけで心臓が意味もなく速く動いたりとかするってこと」
「じゃあ、あたしは颯が好きなの?」
「あはっ、百合ちゃんて超純粋」
質問の答えになってないんだけど
「ねぇ、そうなの?」
「違うよ」
颯は地面に置いていた鞄を拾い、肩にかける。
「恋って、そんな簡単に恋だと気付かないから恋なんだよ」
「…言ってる意味が、わからないわ」
「百合ちゃんに本当に好きだと思える人ができた時、俺の今の名言の意味がわかるよっ」
そんな日が…来るの?
「じゃ、気をつけてね
またあした」
「気をつけて」なんて。
もうあとエレベーターで5階まで昇るだけなのに。
歩きながら笑顔でずっと手を振る颯に、小さく手を振り返した。
「また明日」
笑ったのは、久しぶり。