冷酷系女子
「ははっ、百合ちゃんて残酷だなー」
残酷って、どういう事よ
軽く睨んで颯を見上げると、
颯は腕ごと、あたしに抱きついてきた。
「………何これ」
「特別の証」
耳元ですぐ颯の声がする
いつもより少しだけ低めの声で言葉を出す颯を、なんとなくあたしも抱きしめ返さなければいけないんじゃないかという気にかられたけれど
腕ごと強く包まれているせいで、それができなかった。
ほんのすこしの時間で颯はあたしを離した。
そしていつもの笑顔に戻って、ニコッと笑う
「俺も内緒でつくってみようかな、特別な女の子」
「つくろうと思って出来るものじゃないわ、恋って気付くとしてるものだから」
「今度は百合ちゃんが先輩だ」
形勢逆転ね。
颯には誰よりも力になってもらったつもりだから、今度はあたしが教えてあげる番
きっと、彼には彼の、悩みがあるのだろう
正直、聞いてしまいたい気持ちも無くはないけれど
でもそれを聞くのはあたしじゃない
彼の特別になる、誰かなのだと思う。
本当、誰かの事を気にかけるだなんて、以前のあたしでは考えられなかった。
今までの自分は決して好きではなかったけれど、嫌いでもないからそれいいと思ってた。
けれど、その考えを変えてくれたのはやっぱり…そらや颯や早瀬さんの、特別だと思える人たちの存在があったから。
颯にもはやく、そう思える人が出来るといい
「あっ、予鈴だ
ごめんそれ直接まいまいに返しておいて、同じクラスでしょ」
颯が遠くに消えていく。
同じクラス…
まいまい…
早瀬さんの時もそうだったけれど、やっぱりあたしは未だに、クラスメイトのことを覚えていないらしい。