冷酷系女子



「その子って見る目がないわね、なんて言わないけど」

「それって…」



前に、颯が言っていた台詞

颯が好きだった女性のことを悪く言うと、颯まで悪く聞こえてしまうから。



「けど、結果良かったんじゃない?その彼女がいたから、今の颯がいるわけだし、あたしは人気者気取りの颯も、今の本音で話してる颯も、わりと嫌いじゃないし」

「そこはさー、"好き"って言ってくんないの??」



颯がぷーっと口を尖らせる。



「知ってるでしょう、あたしが好きなのはそらだから」

「ははっ、うん、そうだね」



………あ

颯と話してて忘れてた

あたし、そらに好きなのをやめるって宣言したんだった。



「百合ちゃんはさ、もっとちゃんと、後悔しないくらい頑張ったほうがいいよ」

「颯は…後悔してる?」

「うん、昨日まではね」



昨日まで?

じゃあ、今日からは?



「でも今日、百合ちゃんに聞いてもらってなんか少し楽になったわ
今の俺がいるから満足かな
百合ちゃんにも好きって言ってもらったし」

「言ってないけど」

「まぁまぁ、いーじゃん
嫌いじゃないイコール好きってことでしょ」



その前向きな発想は少し尊敬するわね

少しだけね



「だからさ、百合ちゃんがヘコんだ時は俺が話聞くし
とことんぶつかんなよ」



小さい頃、両親に教わった言葉。

いつからか、ひねくれてあまり使わなくなった言葉がある。

感謝した時に、相手に伝えるのよって

久しぶりに、今がその言葉を使うときなんだって、思った。



「ありがとう」



なんだか少し、照れ臭いわね。



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