冷酷系女子



教室に戻ると、どこから情報が漏れているのか
早瀬さんのことまでもがもう噂になっていた。



「ねぇ、コレ清香がやったらしいよ」

「えーコワくない?普通ここまでする?」

「しかも他のクラスの子が聞いたらしーんだけど、月島百合がやったことにしよーとしてたらしーじゃん」

「仲良い振りして裏切り?なにそれ超コワい」



ぎゃはぎゃはと汚い笑い方をしながら、いつものように女子たちが話している。

それも本人の目の前で。

早瀬さんは黙って自分の席に座っていた。

彼女の元へ向かおうとすると、普段は地味目な女子生徒数名があたしの前に現れた。



「あの、災難だったね、月島さん」

「よかったら今度からはうちらとご飯食べない?」



不思議

今まで高校生活を送ってきて、1度もこんなことはなかった。

彼女を除いては、食事に誘ってくれる子なんて一人も居なかったのに。

あぁ、あたしが友達に裏切られて可哀想だからか



「ありがとう」



今までは素直に出せなかった言葉



「でも、あなたたちとは一緒に居たくない。
今まで皆、私とはかかわらないようにしてたじゃない。
別に助けて欲しいだなんて思っていなかったけど、早瀬さんのことを知ってから、急に掌返して同情で付き合うっていうのは違うんじゃない?」



早瀬さんは、あたしのことが嫌いでも、嘘でも、私と一緒に居てくれたじゃない。

以前、彼女があたしを信じてくれたように、今度はあたしが彼女を信じる番なのだと思う。



「清香」


彼女の目の前に立ち、名前を呼んだ。

彼女は目をまるくして、何度もまばたきをしていた。



「行こう」



さっき練習した笑顔が、うまく出せていただろうか。

返事を待つ前にあたしは彼女の手をひいて、屋上へ向かった。




< 97 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop