冷酷系女子
教室に戻ると、どこから情報が漏れているのか
早瀬さんのことまでもがもう噂になっていた。
「ねぇ、コレ清香がやったらしいよ」
「えーコワくない?普通ここまでする?」
「しかも他のクラスの子が聞いたらしーんだけど、月島百合がやったことにしよーとしてたらしーじゃん」
「仲良い振りして裏切り?なにそれ超コワい」
ぎゃはぎゃはと汚い笑い方をしながら、いつものように女子たちが話している。
それも本人の目の前で。
早瀬さんは黙って自分の席に座っていた。
彼女の元へ向かおうとすると、普段は地味目な女子生徒数名があたしの前に現れた。
「あの、災難だったね、月島さん」
「よかったら今度からはうちらとご飯食べない?」
不思議
今まで高校生活を送ってきて、1度もこんなことはなかった。
彼女を除いては、食事に誘ってくれる子なんて一人も居なかったのに。
あぁ、あたしが友達に裏切られて可哀想だからか
「ありがとう」
今までは素直に出せなかった言葉
「でも、あなたたちとは一緒に居たくない。
今まで皆、私とはかかわらないようにしてたじゃない。
別に助けて欲しいだなんて思っていなかったけど、早瀬さんのことを知ってから、急に掌返して同情で付き合うっていうのは違うんじゃない?」
早瀬さんは、あたしのことが嫌いでも、嘘でも、私と一緒に居てくれたじゃない。
以前、彼女があたしを信じてくれたように、今度はあたしが彼女を信じる番なのだと思う。
「清香」
彼女の目の前に立ち、名前を呼んだ。
彼女は目をまるくして、何度もまばたきをしていた。
「行こう」
さっき練習した笑顔が、うまく出せていただろうか。
返事を待つ前にあたしは彼女の手をひいて、屋上へ向かった。