カレシ

付き合うと決まった後、先輩はあたしのことを"ゆい"と呼び出した。

そしてあたしにも"恭"と呼べ、と言ってきた。


「先輩なんて、なんか壁があるみたいやから嫌やわ!」

「今更無理~!!先輩は先輩だもん!」

ずっと先輩と呼んで来たのに、いきなりそう呼べと言われても、なんだか変な気がしてならない。

「先輩を呼び捨てになんか出来ないよ」

あたしがそう言うと

「なんで無理やねん、ほんなら恭くんでえーわ(笑)」

と言ってくれた。


「恭くん?…がんばってみる~」

あたしは体に染み付くように

「恭くん恭くん恭くん恭くん…」

と唱え出す。

「ぶはッ!!何してんねん!お前キモいわ(笑)」

「なっ!!キモいとか~ひどいし!!」

先輩…じゃなくて恭くんは、その後もケラケラ笑っていた。

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