カレシ

その後、恭くんはあたしの部屋に行きたいと言い出し、二人で家に入った。


「お邪魔します~」

恭くんの声に、おばあちゃんが部屋から出て来た。

「あらまっ、前と人が違う気がするけんど…同じ人かいな?」

おばあちゃんが首をかしげた。

「はじめまして、矢崎恭て言います。ゆいさんとお付き合いさせてもろてます。どうぞよろしく」

恭くんはそう言うと、おばあちゃんに手を差し出した。

おばあちゃんは恭くんの手を両手で包むと、

「えらいしっかりしとるやないの、前の男より男前やし。前の男なんかな、ろくに挨拶も出来んと…」

なんて言っている。

「おばあちゃん、余計な事言わなくていーから」

あたしはそう言うと、恭くんを自分の部屋に連れて行った。


「ちょっと適当に座って待ってて?」

あたしはそう言うと、ジュースを取りにリビングにかけ降りた。


ジュースを持って戻ると恭くんがありがとうと言いながら微笑んでくれた。


二人きりなんて、毎度のことなのにあたしは何故か緊張して、恭くんから離れて座る。


「ゆーい、なんでそんなに遠いんや。こっちおいで?」

恭くんはそう言うと、あぐらをかいている自分の膝の上をポンポンした。

「あ…うん」

あたしは恭くんの上に、恭くんに背を向けて座ろうとした。

「ちゃうちゃう、こっち向いて座って」

「え!!?」

ちょっと戸惑ったけど、言う通りにする。


顔が近くにあってドキドキする。

あたしが視線を反らすと

「ゆい可愛い…たまらん」

と言って、あたしのおでこにキスをした。

「なあ、こっち見て?」

あたしは視線を上げる。


顔が熱いよ…


「なあ、俺んこと好き?」

切なそうな顔をしながら聞く恭くん。

「あ…たり前じゃん」

恥ずかしくって可愛く"好き"と言えない。

でも恭くんは、それに気づいているみたい。

「ちゃんと言って?」

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