カレシ
しばらくはお互い言葉も交わさず、幸せに浸っていた。
気持ちが落ちついてくると、あたしは気になっていることを聞いた。
「バイトの子はどうなったの?」
その問いかけに良くんが少し顔を歪めたのは見逃さなかった。
「ちゃんと話つけたよ。だからゆいは心配しないで」
「…そっか」
ほんとかな?と思ったけど、あんまり突っ込まないことにした。
と言うより、深く聞かない方がいいとどこかで思っている自分がいた。
「その子とはメールとかしてた?」
「…バイトの話とかならしたよ」
やっぱり…
「遊びに行ったりしたの?」
「それはないけど、一回家に送ってったことはある」
「そーなんだ」
その子、ここに座ったことあるんだ。
なんだかすごい嫌な気持ちになる。
「なんで急に気が変わったの?」
「なんでって…やっぱりお前のこと、手放したくないと思ったからだよ?ゆい、辛い思いさせてごめんな」
そう言われると、心に沸きだした黒いものがスッと消えていくような気がした。