カレシ

まきを家に送ってから、あたしは助手席に座り直し、一人悶々と吐き気と戦っていた。

良くんにはちょっと体調悪い、とだけ言っておいた。なんとなく、吐き気がすごいなんて言ったら良くんに嫌われる気がして言えなかった。

「あっゆい、ちょっとそこの喫茶店でお茶してこーよ」

ふいに良くんが言った。

内心、えっ吐き気やばいのに…と思いながらもうなずいてしまった。


喫茶店につくと、いつもならお腹が空くようないい香りも、今日は胃の中をぐるぐるさせた。

「ゆいは抹茶ラテだろ?」

この喫茶店は、前付き合ってた時もちょくちょく来ていたので良くんは一人で注文を終わらせると、タバコに火をつけた。

うっ…タバコの匂いキツっ

実はというと、あたしも喫煙者だ。良くんよりもヘビースモーカーだと思う。
でも今日はその匂いがたえられない。

タバコ吸わない人っていっつもこんな感じなのかな…とか一人で考える。

その間も良くんはいろいろ話かけてきてくれたけど、あんまり会話ははずまなかった。


「お待たせいたしました。」

キレイなお姉さんが注文したものを持ってきてくれた。

もしかしたら、何か飲んだら楽になるかもしれない…

そう思ったあたしは抹茶ラテをがぶ飲みする。

スッと吐き気が引いた、と思った瞬間今までの倍くらいの吐き気が襲ってきた。

やばっ…

耳までボーっと聞こえずらくなり、顔から血の気が引くのがわかった。

「トイレ行ってくんね…」

蚊のなくような声で言うと、あたしは席をたった。

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