カレシ
車の前まで来たはいいけど、ドアを開けるのにやたら緊張する。
えいっ!とドアを開けると、先輩が微笑みながら
「お疲れさんっ」
と言った。
その笑顔にもうズッキューン!!
その場でフリーズしそうになる。
「何してんねん、取って食ったりせんからはよ乗り?」
「う、うんっ」
あたしは車に乗り込むと、お願いしまーすと言った。
「ゆいちゃん家はどこら辺なん?」
先輩は全然緊張なんかしてないみたい。
チラチラこっちを見ながら話してくる。
「ここをずっと真っ直ぐでいいよ、全然遠くないし」
「おっけー」
駅前からあたしの家まではほんとに遠くない。車で15分くらいの距離。
「ゆいちゃん今日は友達と楽しめたか?」
そう聞かれて、ちょっとドキッとした。
「あー、うん」
微妙な返事をしてしまう。
「なんや、何かあったんか?」
「うーん…」
「言いにくいことやったら無理せんでえーで」
先輩に今日あった話をしていいのか悩んでいると、家の近くの分かれ道に来てしまった。
「あっここ右」
「おっけー」
「そしたら次左」
「はいよー」
「2個目のかどを右でー」
「ほい」
「そこ左で、2個目の家!」
「はいはーい、てっ…え!?遠くない言うてたけどほんまに近いやんけ!」
先輩がすっとんきょうな声で言う。
「うん、じゃあ…送ってくれてほんとにありがと!」
と言ってあたしはドアに手をかける。
「えっ!?まじで?ちょい待って!」
先輩は何か焦っていた。
「うん?」
「…嫌やなかったら、もうちょいしゃべってかんか?」
ドキッ…
うわぁ、、なんかすっごい胸がキュンキュンする。
「嫌なんかじゃ、ない…よ?」
小さくこう答えると、先輩はいきなり元気になった。
「よかったー!やっと二人でいろいろ話せる思たら、まさかの家まで近っ!やったでなー!良かったーこんで帰られたら、んまに切なかったわー」
こうして、あたし達は少し話をしていくことになった。