浸透

放課後りんごがうちのクラスに迎えにきた。

「いっちゃーん
また授業中に怒られたの?」

長い髪を指でいじりながら聞いてきた。

「うん、だけどいいの
碧くんと一緒に怒られたから」

「うーわっのろけ〜」

「ごめんごめんー…
でも今日一緒に帰れないんだよね」

「あんたら毎日一緒じゃん
まぁ用事くらい許してやりな?」

べつに怒ってるわけじゃないんだけど…

あたしは胸下まである髪を触りながらぼーっとした。

するとほっぺをつままれた。


「人が喋ってんのにそのくせやめなさいっ」

「いたいいたいー!わかったよぅ…」


♪♪♪〜

着信音

りんごの携帯だ。


りんごは携帯を開き、メールを読むと静かにパチンと携帯を閉じてポケットにいれた。


「いっちゃん。今日あたし一緒に帰れない…」


「えっなんでっ!なんでっ!なんでっ!」


「ごめん…用事できちゃった」

「ひどい!あたしひとりはいや!」

「お願い、今日だけだから…ね?」

りんごの腕があたしの体にしがみつく。

あたしはぎゅっと強く抱きしめ返した。



「じゃあ先かえるわ」

「うん…」

「いっちゃんもなるべく早く帰りなよ」

「わかってる…」



「じゃあね」



りんごはそう言って教室から出て行った。


あたしはまだ残ることにしよう…。



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