浸透
「え…ぁ…」

嘘をつけようのない状況、出てくるのはその言葉くらい?


ねぇ碧くん、いままでのあたし達なんだったの?



「いっちゃん…っあのねっ…!」

「うるさいな!お前は黙ってろ!!」

あたしに怒鳴られたりんごはもたつきながら服を着はじめた。


「碧。あたし碧のこと大好き。」


この状況でこの発言。


ふたりはびっくりしていた。



「碧は?あたしのこと、どう思ってんの?」

「だいすきだよ」


バチンッ!


静かな空気にはじゅうぶん響くあたしの平手打ち。

そう、気がつけば碧の頬を叩いていた。



「じゃあっじゃぁ何でりんごとこんなことしてんの!?
なんで!?ねぇ!いままでのあたし達なんだったの!?
碧!あたしだけ碧を好きだったの!?
碧!碧!碧!!」


涙で視界がぼやける。


ねぇ、碧…答えてよ。





「…しなかったから」


「……え?」


「いちごはしなかったから…。

俺が何回も家呼んだり家行ったりしたのに
それでもお前はそういう雰囲気を避けてた
我慢できなかった、限界だった。
一年も堪えられない。」


碧はそう言って膝に肘を付き頭を抱え込んだ。



それを見兼ねて、りんごが口を開いた。


「いちごがお菓子買いに行ってた時…
碧くんが家に来て、いちごが帰ってくるまで
待ってるつもりだったの…。
そしたら恋愛の話しになって…
……その時…が…初めて碧と…」


それって…、半年も前のことだ。



碧くんが来るから、お菓子やジュース買おうと思って、買い出しに行った日。



一度だけだったからあの日しかない。





あたしの中で何かが切れた。







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