ぼくは、ぼく。
「大丈夫ですか?」
歩道に座り込んだ青年に、
OL風の女性が声をかけた。
「……!
…大丈夫です。
すみません」
後藤は、慌てて立ち上がった。
女性は、軽く会釈をすると
軽い足取りで歩み去った。
あれは、誰かと待ち合わせてやがる。
後藤は舌打ちした。
鞄の隙間に斜めに突っ込まれていた、
既に『開封していた』包みを、再び開ける。
自分のバイト代で買えなくもないが、
自分の為に買うには惜しい一流品。
確か、親が選んだと言っていた。
大学で倒れた彼女の救護に、
彼女の両親は心の篭った感謝を示した。
自分が何者かというのは、実は結構
どうでもいいことなのだ。
自分の周りの、大事な人達が、
確かにそこに居ること。
「ちきしょう、寒いなあ…」
後藤は、コートのポケットから
新品の使い捨てカメラを取り出し、
ビニルパックの封を破った。
フラッシュを起こし、
そびえ立つクリスマス・ツリーに
照準を合わせる。
「…無理かなあ。
ま、ダメモトだよな!
約束だし」
フラッシュが5度程瞬いた。
道行く人々が笑顔で振り返る。
「ほんとうに撮ってるの!?」
後藤も振り返った。
「高橋!…あれ?なんで??」
「写真撮りに来た。
もう大丈夫だってさ」
高橋は、斜め下を見たまま、
独り言の様に言った。
後藤は、他人の分まで
明るい声を張り上げた。
「…そうか、よかったなぁ!!!
あ、そうだ。はい(喜)」
使いかけのカメラを友人に押し付ける。
「なに?」
「撮ったよ。
まだフィルム余ってるからさ。
お前も撮っとけよ、念のため」
押し付けられたカメラを
しばらくこねくり回していたが、
レンズを開かずコートのポケットに
落とした。
「いいや。撮れたなら」
歩道に座り込んだ青年に、
OL風の女性が声をかけた。
「……!
…大丈夫です。
すみません」
後藤は、慌てて立ち上がった。
女性は、軽く会釈をすると
軽い足取りで歩み去った。
あれは、誰かと待ち合わせてやがる。
後藤は舌打ちした。
鞄の隙間に斜めに突っ込まれていた、
既に『開封していた』包みを、再び開ける。
自分のバイト代で買えなくもないが、
自分の為に買うには惜しい一流品。
確か、親が選んだと言っていた。
大学で倒れた彼女の救護に、
彼女の両親は心の篭った感謝を示した。
自分が何者かというのは、実は結構
どうでもいいことなのだ。
自分の周りの、大事な人達が、
確かにそこに居ること。
「ちきしょう、寒いなあ…」
後藤は、コートのポケットから
新品の使い捨てカメラを取り出し、
ビニルパックの封を破った。
フラッシュを起こし、
そびえ立つクリスマス・ツリーに
照準を合わせる。
「…無理かなあ。
ま、ダメモトだよな!
約束だし」
フラッシュが5度程瞬いた。
道行く人々が笑顔で振り返る。
「ほんとうに撮ってるの!?」
後藤も振り返った。
「高橋!…あれ?なんで??」
「写真撮りに来た。
もう大丈夫だってさ」
高橋は、斜め下を見たまま、
独り言の様に言った。
後藤は、他人の分まで
明るい声を張り上げた。
「…そうか、よかったなぁ!!!
あ、そうだ。はい(喜)」
使いかけのカメラを友人に押し付ける。
「なに?」
「撮ったよ。
まだフィルム余ってるからさ。
お前も撮っとけよ、念のため」
押し付けられたカメラを
しばらくこねくり回していたが、
レンズを開かずコートのポケットに
落とした。
「いいや。撮れたなら」