ぼくは、ぼく。
「ホワイトクリスマスとは行かなかったなァ」
「見目はいいけど、寒いのは僕はヤダね」
男二人、空っ風の中、ツリーを見上げる。
「…これなァ、森の中に立ってたやつだな」
「そうなん?」
「真っ直ぐで、枝の広がりが狭いだろ?」
「へぇ。でも、モミの木って、
一本杉でも真っ直ぐ生えるでないの?」
「根っこ伐ってるから、この後は材木か」
「葉っぱが茶色い」
飾り立てられてはいるが、
そこにあるのは生気を失った、
木の死骸だ。
「…そうだな、こいつは、クリスマスとか、
わかんねぇよな…」
高橋は、木を見上げて呟く友人を
怪訝そうに見た。
「ごめんなぁ、仲間から離して。
生まれ育った森から勝手に連れてきて。
こんなところじゃ、自分が誰かも、
解らなくなっちまうよな。
このあとは俺にはわからねぇけど、
成仏してくれよ」
手を合わせてツリーを拝む友人に、
高橋の元々細い目がさらに細くなった。
「…お前も、よーく拝んどけって!!
ナンマンダブ、ってな。
無碍にすっと、祟られっぞ?」
「…………ぁあ。
ひゃっ!!!!!」
高橋は急に後藤の背後に飛び退った。
「ね、猫が居る!!」
「…いねーよ。
猫が冬の夜に歩いてるわけないだろ?」
「そうだけど…確かに何かが足元を…」
「ばかな。神経質なんだよ」
後藤は、わざと、せせら笑った。
冗談にでもしておかないと、
何時間でもヒステリックに気味悪がる。
本人は必ず否定するのだが。
(了)
「見目はいいけど、寒いのは僕はヤダね」
男二人、空っ風の中、ツリーを見上げる。
「…これなァ、森の中に立ってたやつだな」
「そうなん?」
「真っ直ぐで、枝の広がりが狭いだろ?」
「へぇ。でも、モミの木って、
一本杉でも真っ直ぐ生えるでないの?」
「根っこ伐ってるから、この後は材木か」
「葉っぱが茶色い」
飾り立てられてはいるが、
そこにあるのは生気を失った、
木の死骸だ。
「…そうだな、こいつは、クリスマスとか、
わかんねぇよな…」
高橋は、木を見上げて呟く友人を
怪訝そうに見た。
「ごめんなぁ、仲間から離して。
生まれ育った森から勝手に連れてきて。
こんなところじゃ、自分が誰かも、
解らなくなっちまうよな。
このあとは俺にはわからねぇけど、
成仏してくれよ」
手を合わせてツリーを拝む友人に、
高橋の元々細い目がさらに細くなった。
「…お前も、よーく拝んどけって!!
ナンマンダブ、ってな。
無碍にすっと、祟られっぞ?」
「…………ぁあ。
ひゃっ!!!!!」
高橋は急に後藤の背後に飛び退った。
「ね、猫が居る!!」
「…いねーよ。
猫が冬の夜に歩いてるわけないだろ?」
「そうだけど…確かに何かが足元を…」
「ばかな。神経質なんだよ」
後藤は、わざと、せせら笑った。
冗談にでもしておかないと、
何時間でもヒステリックに気味悪がる。
本人は必ず否定するのだが。
(了)