ぼくは、ぼく。
「ホワイトクリスマスとは行かなかったなァ」
「見目はいいけど、寒いのは僕はヤダね」

男二人、空っ風の中、ツリーを見上げる。

「…これなァ、森の中に立ってたやつだな」
「そうなん?」
「真っ直ぐで、枝の広がりが狭いだろ?」
「へぇ。でも、モミの木って、
 一本杉でも真っ直ぐ生えるでないの?」
「根っこ伐ってるから、この後は材木か」
「葉っぱが茶色い」

飾り立てられてはいるが、
そこにあるのは生気を失った、
木の死骸だ。

「…そうだな、こいつは、クリスマスとか、
 わかんねぇよな…」

高橋は、木を見上げて呟く友人を
怪訝そうに見た。

「ごめんなぁ、仲間から離して。

 生まれ育った森から勝手に連れてきて。
 こんなところじゃ、自分が誰かも、
 解らなくなっちまうよな。

 このあとは俺にはわからねぇけど、
 成仏してくれよ」

手を合わせてツリーを拝む友人に、
高橋の元々細い目がさらに細くなった。

「…お前も、よーく拝んどけって!!
 ナンマンダブ、ってな。
 無碍にすっと、祟られっぞ?」

「…………ぁあ。

 ひゃっ!!!!!」

高橋は急に後藤の背後に飛び退った。
「ね、猫が居る!!」

「…いねーよ。
 猫が冬の夜に歩いてるわけないだろ?」
「そうだけど…確かに何かが足元を…」
「ばかな。神経質なんだよ」

後藤は、わざと、せせら笑った。
冗談にでもしておかないと、
何時間でもヒステリックに気味悪がる。
本人は必ず否定するのだが。

 (了)
< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

魔王

総文字数/3,676

ホラー・オカルト7ページ

表紙を見る
払いすぎた年金

総文字数/2,768

ホラー・オカルト11ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop