TO-KO
『微々たるものだが、事情を聞いている。……何も心配する事はない。君が望むなら、いつまでも此処に居ればいい』
『でも――――』
アルフレッドの言葉に、顔を伏せていた彼女は顔を上げ眉を寄せた。無償で匿って下さる訳にはいかないと、そうポツリと小さな声で言った。
クロノアの言っていた通りだったとアルフレッドは頭の片隅で感じた。本当に申し訳なさそうに、此方を窺っている彼女。しかし、今までアルフレッドが抱いてきた女達に同じ言葉を言ったなら、喜んで頭を縦に動かしただろう。
『本当に心配することじゃないんだ。元々、此処はシェアで成り立っているような場所だから。部屋も有り余っているし。………ただ、君が此処に居るだけが心苦しいなら此処で―――召使いをやってはくれないだろうか?』
『―――召使い、ですか?』
瞳子はキョトンと、目を丸くした。彼女にとっては意外な申し出だったらしい。
『そう、召使い。……恥ずかしいながら、此処はむさ苦しい男どもしかいなくてな、誰も掃除だったりしなくて屋敷が埃まみれだ』
何故か、瞳子を放っておけなかったアルフレッドは手を頭に置きながら、至極明るく言ってみた。
すると、瞳子はそうなんですかと薄く笑った。アルフレッドがこの部屋に来て初めての明るい表情だった。彼女がやっと【此処】にいると実感できたような気がした。
アルフレッドも、自然と顔が緩む。