TO-KO
『むさ苦しいとか、聞き捨てならないんだけど?』
急に不機嫌そうなテノールが聞こえてきた。
アルフレッドはその声に反応して振り向くと、ドアに背中を預け腕を組んでいるまだ年若い青年が此方をじとっと睨んでいた。その髪は色素が薄くふんわりとウェーブしている。
『………マチルダか。』
『意味わかんないんだけど、僕のどこがむさ苦しいの?』
『それは男所帯だとわからせる為に言った事だから丁寧に意味を汲み取るな、ってなんでお前此処にいるんだ?』
『ずっと、ノックしてたんだけど。気付かないアルフレッドの耳がイカレテルだけでしょ』
『あのなぁ………』
『はじめまして〜。僕、マチルダ。シェアで屋敷に住んでますー。ちなみに、ライターね』
アルフレッドが引き止めるのを無視して、瞳子が上体を上げているベッドに悠々と近づき、瞳子の手をしっかり握りながらそう言った。
『おい!』
『……何』
『いきなり馴れ馴れしいぞ!』
『そんなの、アルフレッドが決めることじゃないじゃん。君は、大丈夫だったよね〜?』
コクンと首を縦に動かしたトーコを見て、アルフレッドは
『気を使わなくてもー‥』
『いいえ。本当に大丈夫でしたから。……少し、ビックリはしましたけど』
そう、瞳子は苦笑いをしてマチルダに自身の名前を伝えた。
何故か、すこしイラついたのは気のせいだろうとアルフレッドは頭の片隅で考えた。