TO-KO


「――――そうだな、エルを呼んでくれ」

「ミシェル様、ですか?」

「ああ。あいつなら隣に居ても、耐えられる」

女は五月蠅いからな、とアルフレッドは心の中で毒づく。



なぜなら、彼は知らないのだ。
愛し方なんて。
愛されたことがないのだから。

好意は時に残酷だと言うのも嫌と言うほど知っている。
愛でても、失うことだってある。

だから、アルフレッドはけして本気で人を愛すことを諦めていた―――。




「……そっちの趣味がおありなんですね―――。長年共に居りますが、知りませんでした……」

「―――おい。流石に殴るぞ」

「ご自由にどうぞ。まぁ、本当に殴ったら倍返しですけどね。さぁ、判子を押して下さい、アルフレッド様。早く夜会に行かないと」

「――――一生、お前には適わなそうだ、俺……」

「光栄です」



ステルラの紫色の髪が妖しく光った。
なんで、この屋敷には普通の奴がいないのだろうと改めてアルフレッドは思った。







第二章終.
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