TO-KO
瞳子は薄暗い廊下を歩いていた。手に灯りを持っているが、足元はやはり心許ない。
歩いていく先に、更に地下へと向かう階段がある。その階段の奥をのぞき込むと、先は暗闇で何も見えない。しかし瞳子は、そんなことは気にせずに階段を降りていった。
また、再び薄暗い廊下を進む。地下独特の湿気混じりの空気が体に纏わりつく。ひんやりとしていてジメジメしている嫌な空気だ。
その廊下の先には一つのドアしかない。勿論、瞳子の目的地はそこだった。
瞳子は、そのドアの前に着くとノックもなしにそれを開けた。
「あっ、瞳子。いらっしゃい」
「…………いらっしゃいって、呼び出したのは貴方ですよね?」
「そういえば、そうだったね。ゴメンね」
綺麗なテノールを響かせて、ニコニコ笑うのは白髪の少年。彼はこの屋敷の地下に住む魔術師だ。時空の守人でもあるらしいが。
瞳子は、座っている彼の前に歩み寄った。そんな瞳子を見た彼に机を挟んだ先の椅子に座るよう促され、それに従う。
「……クロノア。―向こうで何か動きが?」
「うん、―――すごく大きな動きがね」
クロノアのルビーの瞳が妖しく煌めいた。彼が呼び出すのは、それしかないと思った。