TO-KO
《不思議なヒトがいー……》
書き出したばかりの手を仕方なく止めた。ペン先が潰れてきてしまっている。
目の前の紙の少し滲んだ文字を見て、マチルダは軽く舌打ちをした。
ペン先を新しく買わなくてはならなくなった。
しかし、外にでるのは億劫であるから、シオンにでも頼もうかと思い立つ。
だがあることに気付き、また舌打ちをした。今度は大きく。
「――アイツ、今いないじゃん」
使いっパシリにする予定だったシオンは絶賛、コンサートツアー中で三週間ほど帰って来ないのだ。
本当に役立たずでムカつく。使えない、使えなさすぎるとマチルダはイラついて、頭を掻き乱した。
すると、部屋の電話が鳴った。
頭にあった手をゆっくりと下ろした。
やっと、報告が来たようだ。