TO-KO
「はいはい。じゃ、報告よろしく」
《ん、もう。マチルダには負けるわね。えっーと、北部の襲撃事件についてで良かったわよね》
マチルダは、無言で肯定し先に進むように促す。
《見慣れない服装の男達が突如として、街に現れたみたいね。まぁ10人くらいの少数集団だったみたいだけど。その男達が来て、あっという間に、辺りが火の海になったそうよ〜。恐いわね〜》
男にしては高く、女にしては低い声は本当に耳障りだ。
まぁ、性別も中途半端なのだが。
「ミシェル、君の意見なんて聞いてないよ。続けて」
《ほんっとにツレナイわね、アンタ!!―――まぁいいわ。それでね、その中の男の一人が尋ねたそうよ。此処に、黒髪の女はいないかって。いないって答えると、男は突如として姿を消した、ていうのが、大まかなお話》
「じゃあ、細かい話は?」
マチルダは、いつもの癖で自分の髪の毛を指に巻きつけながらミシェルに問う。
《現れた男達の眼がー‥、完全に焦点が合っていなかったらしいわ。イかれてるって奴。で、いないと言った途端に、聞いてきた男は何かを他の奴に伝えて姿を消し、他の男達は狂ったように住民達に襲いかかってきたみたい。―――この世界ではあまり見ない細身の刀でメッタ刺しの皆殺しよ。ああ、でも辛くも逃げてきた奴がいるから皆殺しではないわね》
「―――狂った男達が黒髪の女を探すためだけに街の者に襲いかかったってことか」
《ああ、あと黒髪の女の名前も言っていたらしいけど、聞き慣れない名前だったから覚えてないって言ってたわよ》
「――――役に立たないな」
そこが重要なんじゃないかと、胸の中で毒付く。