TO-KO
そして、今瞳子は屋敷がある街の音楽や演劇を行うホールに来ていた。
あのあとすぐに瞳子はマチルダを起こしに行った後、アルフレッドを説得しに行った。
却下されるのだろうと腹を括っていたのだが、意外にもアルフレッドは簡単に瞳子のリサイタル行きを認めたのだった。
「…さすが、シオンだな。客がすごい…」
「そうですね…」
「他にもイベントがあるんでしょ。バカシオンの為にこんなに来るわけないし」
「俺はそんなことはないと思うが」
「私も、そうは思いませんけど…」
「二人して仲良いアピール?あぁ、イヤだイヤだ」
アルフレッドがすんなり承諾したのは自身も付いていくという条件付きだったからなのだが。
オマケに、マチルダも付いて来た。
ホールのエントラスには、シオンのピアノを聴きに来たであろう人々で溢れている。若い子が目立つのはきっとシオン自身が目当ての人が多いに違いない。そう思うとあまりいい気はしないが、仕方ない。しかし、あまり人混みになれていない瞳子は正直、辟易していた。
「…そろそろ、開場だろう。中に入ろう」
「はい」
瞳子にはその言葉が救いに思えた。
アルフレッドはさりげなく瞳子の肩を自身に寄せて歩き出す。
それを見たマチルダは、自分が邪魔者であると感じ、二人きりにさせることにした。
「僕はもうちょっと此処にいるよ。中、空気悪いから」
「わかった。ちゃんと来いよ?」
「はいはい」
マチルダとはエントラスで別れ、開場したホールへと向かった。
「全く、マチルダは相変わらずつかめない奴だ…」
瞳子はただ苦笑いをした。なんとなくマチルダの意図が分かったからだ。