TO-KO
そして、マチルダも暫くしてホール内に入ってきて、開演を待つ。

「なんか、楽しみです」

瞳子はワクワクとアルフレッドを見上げる。

「トーコは初めてだからな。俺はもう慣れてしまったから楽しみというのはなくなったな」

「僕は最初っから楽しみなんて思ってなかったけど」

ふんと鼻を鳴らしたマチルダを見て、じゃあ、何故付いてきたと瞳子とアルフレッドは思ったが、マチルダの機嫌を損ねると厄介なので口には出さないようにした。

「そろそろですね―――」

開演一分前になったのを確認した瞳子がそう告げた途端、会場の後方から劈くような女性の悲鳴が聞こえた。


「な、なんだ!?」

アルフレッド達は席から立ち上がり、声のした方を振り向く。

「……面倒くさいことになったかもよ、アルフ」

「どういうことだ!?」


マチルダはアルフレッドに応えず、ただその先を指で示した。その先には数十人の黒尽くめの男たちが次々と観客を刃物で刺していく惨状があった。



「……ぁっ…!」
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