TO-KO
「…流石にこの騒ぎでは何かあったんだって僕でも分かります。スタッフに止められたけどどうしても気になって覗いたら……」
最初は苦笑いをしながら話していたシオンだったが、しまいには眉間に皺を寄せて苦しそうであった。
心の優しいシオンにとってこの惨劇は身を切る思いなのだろう。ましてや、自分のコンサートに来た客が無惨な姿になっているのだから。
「…トーコさん、アルフ達は?」
しかし、シオンは頭をフルフルと軽く振り状況を確認しようと瞳子に話しかけた。
「…先に出ていかれました」
「え…トーコさんを置いて…?」
シオンは信じられないと目を見開いて瞳子を見た。
瞳子は真っ直ぐにシオンを見上げる。
「私が先に行ってくださいと言ったんです。…コレは、私のせいで起こったことですから…」
「ですけど、貴女ひとりこんなところに残すなんて!」
「私が無理を言って、お願いしたんです!アルフレッド様達は悪くありません。それに、コレは私が解決しなくてはいけないことなんです…」
「よく、状況は掴めませんけど…何か訳があるんですね…」
シオンはそう小さく呟きチラリと奏を見た後、唇を噛み締めている瞳子を腕の中から解放した。
「シオンさん?」
「1つだけ言わせてください、トーコさん。けして自分を犠牲にしようとしないでください。…言えないことや隠してることなんて誰にでもあります。僕にももちろん。だけど、その隠し事が自分を含めて誰かを傷付けるようなら、それは隠し事なんかじゃなくなるんです。…貴女の罪になる。だから、もう…タイムリミットだと思います。…今回は仕方ないですが…」
「シオン、さん…」
普段は少しおっとりしていて、周りの空気を穏やかにするようなシオンが、瞳子には少し怖く感じた。
―シオンは見ていないようで見ている。
「絶対、絶対にアルフの屋敷に戻ってくることを約束して下さい。お願いします…」
俯いているシオンの顔を瞳子が窺うことが出来なかったが、シオンの真摯な想いは瞳子にしっかり伝わっていた。
「―はい。約束、します。こんな形で離れるのは私も嫌ですから…」
正直、帰れるという保証はなかった。瞳子にとって最大の敵は、目の前の彼ではないのだ。
目には見えない『瞳子』という掟が一番恐ろしい。
「…良かった」
しかし、シオンが心底ホッとした顔で微笑むので瞳子はこの笑顔を曇らせてはいけないと決意した。
最初は苦笑いをしながら話していたシオンだったが、しまいには眉間に皺を寄せて苦しそうであった。
心の優しいシオンにとってこの惨劇は身を切る思いなのだろう。ましてや、自分のコンサートに来た客が無惨な姿になっているのだから。
「…トーコさん、アルフ達は?」
しかし、シオンは頭をフルフルと軽く振り状況を確認しようと瞳子に話しかけた。
「…先に出ていかれました」
「え…トーコさんを置いて…?」
シオンは信じられないと目を見開いて瞳子を見た。
瞳子は真っ直ぐにシオンを見上げる。
「私が先に行ってくださいと言ったんです。…コレは、私のせいで起こったことですから…」
「ですけど、貴女ひとりこんなところに残すなんて!」
「私が無理を言って、お願いしたんです!アルフレッド様達は悪くありません。それに、コレは私が解決しなくてはいけないことなんです…」
「よく、状況は掴めませんけど…何か訳があるんですね…」
シオンはそう小さく呟きチラリと奏を見た後、唇を噛み締めている瞳子を腕の中から解放した。
「シオンさん?」
「1つだけ言わせてください、トーコさん。けして自分を犠牲にしようとしないでください。…言えないことや隠してることなんて誰にでもあります。僕にももちろん。だけど、その隠し事が自分を含めて誰かを傷付けるようなら、それは隠し事なんかじゃなくなるんです。…貴女の罪になる。だから、もう…タイムリミットだと思います。…今回は仕方ないですが…」
「シオン、さん…」
普段は少しおっとりしていて、周りの空気を穏やかにするようなシオンが、瞳子には少し怖く感じた。
―シオンは見ていないようで見ている。
「絶対、絶対にアルフの屋敷に戻ってくることを約束して下さい。お願いします…」
俯いているシオンの顔を瞳子が窺うことが出来なかったが、シオンの真摯な想いは瞳子にしっかり伝わっていた。
「―はい。約束、します。こんな形で離れるのは私も嫌ですから…」
正直、帰れるという保証はなかった。瞳子にとって最大の敵は、目の前の彼ではないのだ。
目には見えない『瞳子』という掟が一番恐ろしい。
「…良かった」
しかし、シオンが心底ホッとした顔で微笑むので瞳子はこの笑顔を曇らせてはいけないと決意した。