大切なもの

過去

あたしは…ない…。


なにもかも、持ってない。

もちろん、家族もいない。家族とは5歳の時、離れ離れ。捨てられた。本当の親に。
施設にあずけられた。理由は…ただあたしが可愛くないから。普通の平凡顔だし、性格も、全然明るくない。すっごく、性格も顔も、可愛くない子だった。

そんなあたしにも、妹がいた。双子の。

“伊藤恋歌”

恋の歌ってかいて、れんか。

恋歌はものすごく可愛かった。だからものすごく可愛がられて育った。たぶん、今でもそうだと思う。あたしは、すっごいひどいことを言われ続けてきた。よく耐えたなと今では思う。アタシが一番印象に残ってる言葉。

「あんたなんか生まれてこなければよかったのに」

あたしがガラスのコップを割ってしまった時の言葉。わざと割ったわけではないのに。
“ごめんなさい”を連呼してたことを覚えている。



なぜ、顔が可愛くないとかわいがなれないかとゆうと、お母さんにもお父さんにも似てないから。恋歌はすっごく美人でスタイルがいいお母さんに似ていた。お父さんはすっごくかっこよかった。お父さんとお母さんはモデル…芸能界の仕事をしていた。

芸能界で、子供ができたことを伝えたのは、恋歌だけ。恋歌だけ生まれたことだけを告げていたらしい。

あたしは全然お母さんとお父さんに似てない。でも、すっごく顔が悪いとゆうわけでもない。あたしは自分の顔をそう思っている。

…なんで全部顔なの?なんで似てないからあたしはお母さんとお父さんの子供じゃないの?

こんなことを何回思ったか。でも、もうこんなことを思ってもどうしようもない。


あたしを施設においていくとき、お母さんとお父さんはこういった。

「かならず迎えに来るからね。ごめんね、愛音」


嘘つき。嘘つき。嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき。


小さい頃のあたしは恨んだ。お母さんでもなくお父さんでもなく恋歌でもなく。…・・・…・・・自分を。

なぜあたしは生まれてきたの?

あたしなんか生まれてきても、誰も喜ばない。逆に、迷惑をかける。


お母さんにも。お父さんにも。恋歌にも。施設の先生にも。








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