dailicious stories
「どーしたの、有紗」

あたしの顔をのぞき込みながら智也が言うけど

「なんでもないよ。」


そう言うので精一杯だった


 『美紀。あたしね、

  智也と付き合ってるんだ』



この一言を。

早く美紀に言ってあげられてたら

あんな切ない美紀は見ないですんだのに─



「有紗帰ろうぜ。自転車後ろ乗るだろ?」

「…うん。」


窓から覗く真っ赤な夕日

美紀とあたしはまた一緒に笑えるのかな


…明日、全部話そう。

美紀は泣くかもしれない。

…それでも言おう。

そのあと智也にも、『ごめんなさい』を言おう


真っ赤な夕日に

そしてこれが最後になるだろう、こんな近くで見る智也の笑顔を目に焼けつけながらそう誓った


10/03/15
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