ナマイキオトコの手懐け法
…にしても。
この人、中本先輩とどういう関係なのかな。
少し怖かったけど、勇気を出して、尋ねてみる。
「あ、あのっ…先輩は、中本先輩と仲いいんですか?」
「……………はっ?」
目を見開いて驚いた顔をしている彼を前に、なにか変な事を言っただろうかと内心焦る。
そんな私の心中を察したのか、彼はため息をついた。
「あのさ………俺、あんたより年下だから。『先輩』じゃないから」
「…………え」
即座に彼の足元を見る。
―――緑スリッパだ。
うちの学校はスリッパの色で学年が分かるようになっている。
青は先輩達高3。
茶色は私達高2。
そして彼の履く緑は………
「こ、高1……?」
「そうだけど。なに、文句ある?」
「文句ある?って…敬語くらい使って話しなさいよ!同級で見たことないから、消去法で高3かと思っちゃったじゃない!」
ありえない。
後輩相手に敬語使って、先輩なんて呼んじゃって……
おまけにこいつは敬語使ってくれてないし、私のこと、あんた呼ばわりだし……
「礼儀ってもんがあるでしょ!」
「はー?勝手に勘違いして逆ギレすんのやめろよな」
いやいや、理にかなった怒りですけど!
売り言葉に買い言葉で口にしかけたが、なんとか呑み込んだ。
私の方が先輩として大人な対応をしないと…
深呼吸をして、脳に酸素を送り込む。
「間違ったのはごめんなさい、でも、やっぱり先輩に対してはそれなりの態度で接するべきだと思うよ」
さぁ、謝れ小僧よ。
「……………ちっ…」
「……今、舌打ち聞こえた気がしたんだけど」
「気のせいじゃないすかー?俺知らね」
は、腹立つー…!
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