だいすきだよ 短編集☆
ケンゴは「そっか」と言って、それ以上は何も聞かず、
私の頭に大きくてごつごつした手を置いた。
〝麻子も敦も、大きくなったな〟
パパが笑っている。
ママとお兄ちゃんも笑ってた。
もちろん私も笑ってた。
パパという家の明かりが消えた今。
お兄ちゃんの笑顔も、ママの笑顔も、
そして、私の笑顔も消えてしまった。
「パパぁ…っ」
小さな子供みたいに泣き出した私に、あわてながら
くしゃくしゃのハンカチを差し出すケンゴ。
「おまっ、お前からいいだしたんだからな!」
ちょっと焦っているが優しい声。