しんぐるべっと
プロローグ
いつの間にか始まって、いつの間にか終わっていた。
手放すのが怖かった。
この『当たり前』を…
居心地がよくて、たまらなかった。
愛されてる自分に酔っていた。
ただ
頭の中には常に終わりが見えていた。
この『当たり前』の中にずっといたら、ホントの自分が消えそうな気がした。
独りになりたくなかった。
でも
心のどこかでは独りを求めていた。
みんなと同じように、俺を避けるようになってしまうのが怖かった。
だから
俺は与えられた愛から逃げることにした。
初めから愛なんて信じなければ、こんな傷つくことはなかったのだ。
自分の中で勝手に結論づけた。
弱かったのだ、自分が…
俺は影の中に独りたちすくんでいた。