回転木馬
もうこのベンチで一時間は経ったかな。太陽が大分高いとこまで上がってた。
少し。暑い。
何気なくカメラで今日一日の写真を見返す。
『ふっ、ほらペロ見て?こんな間抜けな顔しちゃって♪』
そうやって隣でうずくまってたペロに見せたら
[ミャ〜ミャ〜!]
たぶん。
[やぁだぁ!]
って言われた。
消してよ!って暴れてるペロをほっといてまた写真を見返してく。
この桜上手く撮れたかも。
あぁこれはちょっとピントが…。
あっいい!これはいい!このペロは可愛い!
でも、たった一枚の写真で、この平和な時間がゆっくりと砕けていった気がしたんだ。
へ―――…?
少しだけ鳥肌が立って、カメラを持つ手が小さく震えた。
どして―
どして―
どして―
目の前の写真に疑問しか浮かばない。
その写真に写っていたのは、明らかに私の寝顔だった。
だれが―
いったい―
どして?―――
ここに…誰か知り合いが来たのかな…?それでいたずらに…撮ってったのかな…?
ならいい。
それなら全然いいんだ。
だけどふと顔を上げた時ニマって笑うおじさんと目が合ったから、そうやって簡単に片付けられなかった。
心の奥の方に渦を巻く不安感。
なんか…
気味悪い。
やだ。
私は早歩きで自転車の方へ向かった。