回転木馬



お父さんが帰ってきてテーブルに夕食を並べた。



今日はお母さんの得意料理の鶏肉のクリーム煮だった。私の大好物。





だけど、



「琴音は、そろそろ彼氏とかできないの?」





お母さんがいきなりそんなこと言うから、フォークが止まった。





『いきなりなんで?』

「だってそろそろ17でしょう?」

「まだ17だろう。」

「れなちゃんだっているんだし。」

「“れなちゃんは”だ。」



二人の会話で、私はお父さんの方の台詞に相槌をいれる。



「学校にはいい人いないの?」

『ん…ま、日曜日に会うだけだし…』

「でも一人くらいは」

「そんなに急がなくたっていいだろう。」

『そうだよ。いきなりどしたの?』



私に彼氏だなんて考えたこともなかったから、ちょっと話しについてけない。



「だって〜琴音だって女の子じゃない。恋くらいしないと♪」





っ―――恋…





別にしてないわけじゃないんだけど…ね。





幼なじみの三希くんが私の頭の中に浮かぶ。





「ほら、三希くんだっていい子じゃな〜い」





っ!!!





顔が…あつい…





「三希君には雫さんとやらがいるだろう」





あ…





「それはあなた…」





胸の奥がぎゅーっと締まって何か思い塊がゆっくりと落ちていく。





苦しい―





私。やっぱりだめだ。この話しになると、悲しくなっちゃうや…







『わ、私、さっきパン食べちゃったんだ』





言わなかったのは私。





『だからお腹いっぱいになっちゃった』





言わなかったのは私。





『だ、だからこれ、お母さんあげるね?』





告白しなかったのは、“私”なんだ。






だって、三希君に彼女だなんて…そんなの…そんなの…考えもしなかったよ…





< 7 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop