回転木馬
お父さんが帰ってきてテーブルに夕食を並べた。
今日はお母さんの得意料理の鶏肉のクリーム煮だった。私の大好物。
だけど、
「琴音は、そろそろ彼氏とかできないの?」
お母さんがいきなりそんなこと言うから、フォークが止まった。
『いきなりなんで?』
「だってそろそろ17でしょう?」
「まだ17だろう。」
「れなちゃんだっているんだし。」
「“れなちゃんは”だ。」
二人の会話で、私はお父さんの方の台詞に相槌をいれる。
「学校にはいい人いないの?」
『ん…ま、日曜日に会うだけだし…』
「でも一人くらいは」
「そんなに急がなくたっていいだろう。」
『そうだよ。いきなりどしたの?』
私に彼氏だなんて考えたこともなかったから、ちょっと話しについてけない。
「だって〜琴音だって女の子じゃない。恋くらいしないと♪」
っ―――恋…
別にしてないわけじゃないんだけど…ね。
幼なじみの三希くんが私の頭の中に浮かぶ。
「ほら、三希くんだっていい子じゃな〜い」
っ!!!
顔が…あつい…
「三希君には雫さんとやらがいるだろう」
あ…
「それはあなた…」
胸の奥がぎゅーっと締まって何か思い塊がゆっくりと落ちていく。
苦しい―
私。やっぱりだめだ。この話しになると、悲しくなっちゃうや…
『わ、私、さっきパン食べちゃったんだ』
言わなかったのは私。
『だからお腹いっぱいになっちゃった』
言わなかったのは私。
『だ、だからこれ、お母さんあげるね?』
告白しなかったのは、“私”なんだ。
だって、三希君に彼女だなんて…そんなの…そんなの…考えもしなかったよ…