アイ・マイ上司とlove★battle
新参×上司=?
恋愛には駆け引きが大切というけど、ソレが出来ない相手の場合はどうするの?
たまには仕掛けたくても、甘いトリップに引っ掛かってくれないから困るのに…――
だ、誰だろう…、かなりの美人さんだけど・・・
誰か判らない女性に対して疑問符を浮かべたのは、きっと私だけではないだろう…。
あちらこちらでコソコソと囁き合いザワつく中を、コホンと部長が咳払いをした。
「実は人事部に掛け合って、欠員の後任を探していたが…。
他部署も人材不足のうえ、異動出来る適任者がいなくてね…。
そこで、新たに即戦力になる方を採用する事になったんだ。
では笹森さん、一言…――」
「はい、かしこまりました」
部長が簡素な説明をしたあと、課長の隣からスッと一歩前へ出て来た女性。
すっかり静まり返った部内に、コツンとひとつヒール音が鳴り響いた…。
「本日よりお世話になります、笹森 京香(ササモリキョウカ)と申します。
不慣れな点も多くご迷惑をお掛けするかと思いますが、よろしくお願いいたします」
その綺麗な容姿を際立たせるように、挨拶だけでなくお辞儀の角度まで完璧で。
見とれていたらしい部内は、部長と課長からの拍手音で平静を取り戻したほど…。
「よろしく頼んだぞ、笹森くん」
「はい、ありがとうございます」
そうして部長に笑い掛ける女性こそが、嵐の巻き起こす人とも知らないで。
歓迎の拍手をしながら私は、笹森さんの隣の課長の表情に首を捻っていた…――