アイ・マイ上司とlove★battle
いくら動揺していても、修正箇所は殊更の確認をしていたつもりだけど。
貸借の反対以前に、勘定科目自体が違っていれば元も子もないようだ…。
「入社してもう1年経つのよね?
こんなレベルで躓くなんて、経理に向いてないんじゃない?」
「っ…、すみませ…」
ハァ…と呆れた面持ちで溜め息を吐き出す彼女に、また謝罪をするだけの私。
「いい?経理の役割はね・・・
会社の要である財政状況を、正確かつ明確にさせる重要な部門なの。
中途半端なんて済まされないの、たとえ1円でも違えば大問題だし。
まぁ…、これくらい“部内”の人間なら分かるわよね?」
「っ、すみません…」
経理の役割と意味を分かっているのに、不出来な自分が凄く情けない。
自然と射るような鋭い眼差しを避けていたのか、俯いてお説教を受けていると。
すっかり正面を向けずにいた背後から、コツコツと聞き慣れた革靴音が聞こえた…。
「笹森さん悪い…、今大丈夫か?」
「っ・・・」
「えぇもちろんです、どうなさいましたか?」
「この特別償却の件についてだけど…」
「あぁ、それですよね…」
そうして課長と笹森さんは、あっさり私をスルーして話を始めてしまう。
当然立ち位置が見つけられず、背後から届くオリエンタルな香りに悲しさを覚えた・・・