アイ・マイ上司とlove★battle
誰にだって過去はあるし、こんな私にだって少ないなりに存在するモノだから。
ソレは分かってる…、輝くらい大人なら当たり前だって、分かってるのに…。
「そうそう、彼って…キスする時に髪を耳に掛けるでしょ?」
サラッと言いのけながらも、そこには嫌味と皮肉交じりもプラスされていて。
「んー、キスの巧さは輝がナンバー1だったわ。
もちろん、カラダの相性もバッチリだったけど…」
「・・・っ」
どうして私を前にして?という疑問すら、もうバカバカしく思えるほどだ。
「あら…黙り込むなんて、アナタもまだまだお子様ね。
彼も彼だわ…、こんなガキっぽい子のドコが良いのかしら?
輝もこんな子に行き着くなんて、すっかり落ちたモノね――」
ハァーと深い溜め息をついて悪態をつく姿には、悲しみしか生まれない。
どうして“輝が落ちた”って、そんな酷いことが言えるの…?
「っ、…さい」
「なによ?」
グッと拳を作りながら俯いていた私は、我慢ならずに彼女の目を捉えた。
「わ、私の事は…何と言って頂いても、事実だから仕方ないです…。
けど、ひか…か、課長の悪口は言わないで下さい…!」
怒りと悲しみに乗じて、泣きながら必死で声を荒げてしまった私。