アイ・マイ上司とlove★battle
そんな彼女に乗じて私も、気難しそうな面持ちで電話中の課長を一瞥すれば。
念力でも通じてしまったのか、受話器を片手にフッと笑った彼と視線が合った。
「・・・っ」
その秀麗でいて大人の雰囲気を纏う顔立ちに、またドキドキさせられただけで。
気づかれてしまった恥ずかしさに、慌てて視線を自分のデスクへと戻すと。
預かって来た元帳を開き、思い出したようにスリープ中のPCをクリックした。
仕事モードから不意をついたアイマイな表情には、すぐに対応出来ないもん…。
そうして元帳を見るフリをしながら、また彼の方へ視線を向けてしまえば。
その先ではいつも通りに、落ち着き払っている稲葉課長を捉えただけ…。
絶対に心の内では笑ってる筈…、“今日もネタを献上してくれた”ってね・・・
「・・・はぁ…」
今度こそバレないように、ごく自然なフリを装ってPCの画面へ向き直った私。
独特の音に包まれた部署内のお陰で、漏れ出た小さな溜め息を掻き消してくれた…。
知れ渡った関係に、イイ顔をしない女子社員が多勢を占めているのは事実でも。
大好きな輝がハッキリ宣言してくれたお陰で、今のところは平穏無事で幸せなの。
だから“一難去ってまた一難”になるとは、おバカな私が知る由もなく・・・