素敵な片思い
「うん…。いいや」


「何でまた突然ケーブル?山場なら、どこにでもあんだろ…」


「ケーブルね、昔の話だけど…。小さい頃の思い出。ここみたく海に囲まれた場所じゃなくて。本当に山ばっかりの所。

昔ね、お父さんと…よく山登りしたんだ。結構キツい坂道だったけど、汗かいて登って…。しんどかった」


そこまで言うと、杉浦くんはますます呆れ声。


「しんどい思い出だったら、何でわざわざケーブル乗りてーワケ?」


「しんどかったけど、登ってる途中に…色んな人とすれ違うんだよね。

頂上まで着いて降りて来た人、登る途中で景色や自然や動植物を楽しむ人。

みんなね、それぞれ知らない人同士なのにすれ違い様は挨拶するんだよ?」


「へー…。オレ山登りなんか、遠足ぐらいだな。弁当食べた事しか覚えてねぇ」


「そーなんだ?でね、たまに話し込んだりして一緒に途中まで登ったりとか。それがすごく、楽しくって。

だからかな、接客業に就いて…色んな人と話してみたいって思うようになったの」



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