素敵な片思い
…ふと、昔の記憶が蘇る。


本当は初めは、山登りなんか嫌だった。


しんどいし辛いし。


杉浦くんの言う遠足の山登りなんて、本当に最悪。


春か秋か忘れたけど、山道でスズメバチがホバリング待機してたり、


喉が渇いても、休憩までお茶飲む時間もくれない。


一番厄介なのは、みんなで一例に並んで、早い子も遅い子も、先生の気まぐれな速さに合わせて登らないといけないから。


でも、お父さんとの山登りは…違った。


しんどい時は立ち止まってもいい。お茶も好きな時に飲める。


登る途中で、お父さんは色んな鳥や植物の話をしてくれたっけ。


自然が大好きだったお父さん。


今はもう、仕事人間で…そんな面影は全くないんだけどね。


懐かしい…思い出。


「だったら山登る?その靴で」


杉浦くんは私の靴を指差す。


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