見付からないキモチ。
序。




「来週の月曜日に
俺の携帯も止まる。
取り敢えず
俺がどうにかするから」

それは静かな
死刑判決だった。
解りきっていた事が
とうとう、
目の前まで来てしまった。
ただそれだけのこと……。
きっと私は呆れられ、
嫌われてしまうのだろう。
何処か安堵する私と、
情けなさで
消えてしまいたい自分が居た。
一週間後に出そうと
用意していた婚姻届も、
今や紙切れにしか過ぎない。

「だから麻美?
幾つか俺と約束して欲しい。
良い?」

伏せていた顔を上げ、
愛しい人の顔を見詰めた。

「……何?」

「前向きに生きる事。
圧迫されて生きてきたから
羽を伸ばしたいのは解るけど、
無駄遣いは控える事。
ずっと俺の側に居ること」

期待外れな答えは
余りに私に都合が良すぎて、
ただ理解に苦しむ。
どうしてこの人は、
巧は、
私を嫌わないの?
どうして捨てないの?
私は首を横に振るしか
出来なかった……。
巧の側に居る事が、
彼にとって良い事が一つもないと、
彼以上に私が解ってる。


 
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