”未完全”

 父親は、綾乃の成長が、楽しみだった。

母親が居なくなった事で、引け目を

感じさせたくなかった。


でも、時々、綺麗な女の人が来るのは、

嫌だった。

その人は、時々家に来ては、洗濯、掃除、

夕食まで作ってくれた。

子供の綾乃にも、その人と父親の関係は、

何となく解っていた。

だから、嫌だった。


 綾乃の心に刻まれた事は、

誰にも、期待しない…。


期待してるから、傷つくと思っていた。

最初から、信じなければ、傷つかない。

そうすることで、子供の綾乃は、

自分の心を、守っていた。
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