”未完全”

どこで会ったんだろう?綾乃は、昔の記憶

普段は、振り返ったりしない昔の事を

思い出そうとしていた。

 「忘れちゃったの!?有美香だよ。」

笑顔でその女性は、そう名乗った。


 「えっ、有美香?高校が一緒だった有美香なの?

 すごく変わっちゃって、わからなかった。ごめん。

 でも、よく、私だってわかったよね。」

綾乃は、びっくりしながらも、懐かしさを

感じていた。

 「綾乃は、ぜんぜん変わってないから、

 すぐわかったよ。あの頃のままだよ、

 私、綺麗になったでしょ?20キロ痩せたの。

 頑張ったんだよ!」

 有美香は、自信ありげに、そう言った。

二人は、高校の同級生で、親友だった。

23歳位までは、一緒に遊んだり、相談したりされたり…

だが、綾乃の結婚を境にだんだん連絡をとらなくなり、

疎遠になってしまっていた。正直いって、綾乃は、

有美香という親友がいたという事実さえ、

忘れかけていたかもしれない…。


それだけ、いくつもの季節が、通り過ぎていったのだ。

春、夏、秋、冬…。最後に遊んだのは、いつだったんだろう?

そんな事を、綾乃は、ぼんやり考えていた。

有美香は、仕事の話しとかを、身振り手振りを交え、

話している。本当に生き生きしている…。
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